PROJECT STORY #03 コミュニティプロジェクト

見守りと、つながりと支えあい。
~「みんなの居場所」プロジェクト~

コミュニティプロジェクト

JKK住宅では居住者の方々の高齢化に伴い、コミュニティ活動が衰退し、居住者の孤立化リスクが高まっています。こうした課題に向き合い、JKK東京は福生市の熊川住宅においてお住いの方々などが気軽に立ち寄れる「みんなの居場所」を整備することで、居住者や地域に住む人同士がつながり支えあいながら住み続けられるよう、新たなコミュニティ創出のきっかけづくりに取り組んでいます。

CHAPTER 01

失われつつあるコミュニティと
高まる孤立化リスク

福生市の「熊川住宅」が建設されたのは1963年。かつては大勢の子育て世帯が入居し、餅つきや縁日などのイベントでにぎわっていたこの団地も、声を上げて走り回っていた子供たちが成人して家を出て行くにつれて徐々に活力を失っていきました。現在では15棟約600戸に暮らす方々の40%以上が65歳以上。加えて高齢者の単身世帯が過半数となっています。団地のコミュニティを支えてきた自治会のメンバーも高齢化。コロナ禍による活動自粛も追い打ちとなり、一度遠ざかってしまった活動を再開することは簡単なことではありませんでした。
このように高齢者の単身世帯が増え、居住者同士の交流する機会が減った団地内では、コミュニティ意識が希薄化し、孤立化リスクが現実的なものとなっています。
当然、居住者の皆さんのこの団地への愛着は強く、これからも長く住み続けたいと考えています。そのためには居住者同士がつながり支えあい、地域との関わりを築いていくことが不可欠です。それはここに暮らす人びとの“命”を守ることにもつながるでしょう。居住者同士の交流が生まれやすい環境にある団地の存在意義を未来へと受け継いでいくための取り組みが始まりました。

失われつつあるコミュニティと高まる孤立化リスク

CHAPTER 02

未活用スペースを新たな拠点に

いかにして「熊川住宅」に団地コミュニティを再構築するか。その課題意識のもと、ある職員が一つのアイディアを思いつきました。
「管理事務所を『みんなの居場所』として活用できないだろうか」
JKK住宅には管理事務所が設けられ、かつてはフロントスタッフ(管理員)が住み込みで団地の管理業務に携わっていました。現在では住み込みはなくなり、フロントスタッフも通勤の形態に。それに伴って、住み込み部屋であったスペースは物置等に使われていました。このスペースを誰でもフリーに利用できる場に転用できないか、というアイディアだったのです。
団地コミュニティの再生には、団地の空きスペースに拠点施設を整備する再生事業も選択肢の一つです。しかし、莫大なコストや建設計画に期間を要することから、容易に行えることではありません。「熊川住宅」も事情は同様でした。その点、「管理事務所」という既存資源を活用した手法は実現性の高いものでした。
JKK東京では、一つのモデルケースという意味合いも込めて、このプロジェクトをスタートさせることにしました。具体的には管理事務所と管理事務所に隣接する住み込み部屋であったスペースを改修し、気軽に立ち寄れる場所を実現。自治・交流を目的とした従来の集会所とは異なり、目的がなくても自由に利用できる居場所スペースとしました。

未活用スペースを新たな拠点に

CHAPTER 03

関係者も積極的に巻き込む

「みんなの居場所」をつくるにあたって工夫した点は、居住者の皆さんはもちろんのこと、福生市、地域の福祉関係者、活動団体の意見も反映することでした。空間づくりというハード面はもちろんのこと、運用のソフト面についても積極的に意見を取り入れていったわけです。
狙いは「みんなの居場所」を、見守りの空間とするため。しかし、身近にいるフロントスタッフだけでは居住者の方々を見守るには限界があります。そこで地域の福祉関係者や活動団体などに積極的な利用を呼びかけることで、“ゆるやかな見守り”ができるのではと考えたのです。
地域に暮らす様々な立場の方々が日常的に「みんなの居場所」を利用してくれることで居住者の方々との交流が生まれ、そこで生じるコミュニケーションの中から生活の悩みや地域の課題の早期発見につながるのではないか。そのような狙いが込められていました。
JKK東京の呼びかけに対する反響は予想以上に大きく、福生市の様々な部門の関係者や団体の方々が意見交換の場に足を運んでくださいました。行政側も高齢者の孤立は大きな課題と受け止めており、その解決に向けてJKK東京の呼びかけは課題解決の好機と映ったのでしょう。

関係者も積極的に巻き込む

CHAPTER 04

コミュニティ再構築への第一歩

「みんなの居場所」の整備が進む中、気運を盛り上げるためにイベントも企画されました。これは「みんなの居場所」の告知を兼ねたもので、福祉関係者によるバンド演奏や自治会によるわなげ大会、だれでも食堂によるバーベキュー、焼きマシュマロなど様々なアイディアが出され開催されました。
さらにこのイベントとは別にだれでも食堂と居住者が協力し、かつて自治会が取り組んでいた餅つき大会が復活するなど、自主的な活動も目立ち始めました。コミュニティの再構築に向けて、団地全体に大きく一歩踏み出したような空気が生まれてきたのは間違いありません。子供たちのはしゃぐ声にあふれていた、かつての団地の姿を思い出し、もう一度あの頃の団地を取り戻そうと考える方も多いはずです。こうした意識こそ、「みんなの居場所」がもたらした最大の変化でしょう。
「みんなの居場所」プロジェクトは国土交通省の「人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業」に選定されました。「みんなの居場所」が団地の空間にとどまらず、地域全体のコミュニティの拠点になっていったら、こんなに素晴らしいことはありません。JKK東京では、熊川住宅をモデルケースに、「みんなの居場所」を他の団地へと横展開していくことも検討しています。

コミュニティ再構築への第一歩