PROJECT STORY #02 住宅管理事業

色彩への“想い”を貫き、
建物の付加価値を高める。
~トミンハイム国分寺泉町
リニューアルプロジェクト~

住宅管理事業

JR西国分寺駅近くに、2000年に建設された「トミンハイム国分寺泉町」は、管理戸数405戸の大規模住宅団地です。緑豊かな景観に溶け込む外観へと生まれ変わったことで、環境色彩コンペティションを受賞するなど、高い評価を得ています。背景には“色彩”という正解のない領域で貫かれた、JKK東京・住宅営繕部の担当者の強い想いがありました。

CHAPTER 01

色あせへの対応でスタート

「トミンハイム国分寺泉町」が建設されたのは2000年。かつてのバブル経済の影響を引きずる中で設計が進められたこともあって、その外観はかなり個性的なものでした。特に外壁には青や緑、オレンジといったビビッドなカラーが用いられており、非常に自己主張の強い外観となっていたのです。それが経年劣化によって色あせが進んでいた状態でした。
また、JR西国分寺駅にほど近い立地から、団地住民以外の往来が盛んで、敷地内を通勤通学の地域住民や駅利用者、遊び回る子供たちなどが1日約1,000人も通るほど。園バスの経路としても利用されていました。そのため本来は植栽が植えられていた外構に、いつの間にか“けもの道”のような通路が誕生していました。
法に基づく点検報告の周期ということもあり、JKK東京では修繕工事の実施を決定。国分寺市等との協議を経て、2023年に工事をスタートさせました。

色あせへの対応でスタート

CHAPTER 02

万人受けする色彩はない

修繕における大きなポイントが“色彩”、つまり外壁をどんな色に塗り替えるかということでした。経年劣化による色あせへの対応という“守り”の発想ではなく、建物の付加価値を高める、バリューアップのための“攻め”の発想で色彩の検討が進められたのです。
色彩の計画は、行政との調整からスタートしました。東京都と国分寺市それぞれに景観条例が定められており、どのような色彩がふさわしいか、協議を重ねていきました。「トミンハイム国分寺泉町」の周辺環境から、文化遺産的な側面にも配慮した色彩であることが国分寺市から求められました。
これらを踏まえて、住宅営繕部では色彩の検討を進めていきました。
当たり前ですが、色彩には万人が納得する正解はありません。誰もが好きな色はありえず、印象や解釈も文字通り十人十色です。景観条例との折り合いを付けていく協議も、どの色なら受け入れられて、どの色なら認められないという線引きが非常に曖昧なままで進められていました。
そうした中で住宅営繕部の担当者が選び抜いて決めたのが、周辺の街に溶け込むアースカラーでした。「調和」「秩序」「落ち着き」といったコンセプトのもと、自然由来で、柔らかさや安心感をイメージさせる色調です。
このコンセプトについては、JKK東京内でさえ「地味ではないか」と懸念する声があったほど。色彩の決定とは、それほど多様な考え、感性の中で進められていくわけです。
その状況において最終的に本色彩案での決定に至ったのは、担当者個人の強い想いがあったから。「トミンハイム国分寺泉町」の特徴や地域の歴史的背景、行政側の方針など、すべての要素を踏まえた上で、担当者が自信を持って進めたことが、この決定につながったのです。
当該の建物に最も精通した担当者が、強い想いのもとで貫いていく──。こうしたプロジェクトの進め方は、JKK東京ならではの大きな魅力の一つです。

万人受けする色彩はない

CHAPTER 03

現場の安全管理には徹底を期す

工事をスタートするに際して懸念されたのが、現場の安全性でした。前述のように居住者以外の往来が非常に多いこともあり、安全管理には万全を期すことが求められたのです。
この点については、工事区画を細かく区分して、明確に告知することを徹底。『ここは入れません』『通行できません』と看板等で通行人に周知しました。基本的なことではありましたが、妥協なく徹底することで事故はもちろんのこと、苦情も一切発生しませんでした。
また、通常の修繕工事とは異なり、監督員が常駐する体制としたことも安全管理に大きく寄与しました。監督員室を現場に設け、住宅営繕部の担当者が常駐。刻々と進む工事の状況を見ながら、安全性確保のための対策を臨機応変に打ち出していったのです。修繕工事では異例のことでしたが、これも事故ゼロ・苦情ゼロの支えとなりました。
このように万全の対策を取ったとしても、工事を進める中で想定外の出来事は発生するものです。今回は屋上に敷かれた鋼板屋根が劣化していることが工事中に判明し、その対応を行ったことで、工期に遅れが生じてしまいました。このように現場の状況にいかに柔軟に対応していくかが、修繕工事の難しさであり、醍醐味でもあります。

現場の安全管理には徹底を期す

CHAPTER 04

コンセプト・配色への第三者からの高い評価

竣工は2024年11月。付帯して行われたエントランスのリニューアル工事も含めて、生まれ変わった「トミンハイム国分寺泉町」は住民の皆さまに大変喜ばれました。加えて、環境色彩コンペティション「第27回グッド・ペインティング・カラー」の改修部門において優秀賞を受賞したことは、JKK東京にとっての大きな喜びとなりました。
受賞の決め手となったのは、地域環境との調和や一体感が高く評価されたこと。“自己主張しすぎないこと”という色彩設計が第三者にも認められた点を、担当者はことのほか誇らしく受け止めています。授賞式で同席した他社の担当者から、個人の想いを貫いた色彩計画であることに驚きの声が上がったことも、誇らしさにつながったそうです。
住宅だけでなく地域全体の景観性の向上にもつながった「トミンハイム国分寺泉町」のリニューアルプロジェクト。その姿は緑豊かな街に溶け込み、これからもずっと愛されていくことでしょう。

アースカラーへの第三者からの高い評価