



「CALMEST興野町」(足立区)は、
興野町住宅の一部建替えによって誕生した、
新旧の街並みとコミュニティが融合する
特徴的なJKK住宅です。
今回は、カーメストが誕生する前から
長年この住まいとまちを
見守り続けてきた
〈興野町住宅自治会〉の吉野さん・水越さんに
団地における“つながり”の
今とこれからについて話を聞きました。

カーメスト興野町

景観を守りながら
暮らしやすさを追求
―新旧の住まいと
コミュニティの融合
団地の建替えと長期活用を複合的に行う一部建替事業によって2022年9月に誕生したカーメスト興野町(おきのちょう)。昭和34年に竣工した興野町住宅の一部エリア(A号棟エリア)の住棟を建替えた住宅で、新旧の住まいとコミュニティが融合する、珍しいプロジェクトです。
また、建替えに合わせて、元々このエリアにあった豊かな樹木や周辺地域の景観を保全しながら、歩行者の安全に配慮した沿道を整備。住宅の南側には〈興野町いちょう公園〉を新設するなど、安全で暮らしやすい住環境を整えました。長期活用エリア(B・C号棟エリア)では、新たなコミュニティサロンの建設や広場のリニューアル、コミュニティガーデン(区画菜園)の整備などを行い、暮らしのさまざまな場面で“つながり”を生む機能を備えています。

興野町住宅

全体図

コミュニティガーデン(区画菜園)

古き良き賑わいを
次の世代に残したい
―多世代の“つながり”が
生まれるように
〈興野町住宅自治会〉の吉野さんは建替え対象となったA号棟、水越さんはC号棟にお住まいで、興野町住宅とカーメスト興野町、新旧の住宅での人々の暮らしに触れながら、時代とともに変化してきたこのまちと団地を長年見守ってきました。
「このあたりはスーパーや病院、学校もあって、とても暮らしやすいまちです。昔は興野神社周辺の町内会の活動やお祭りも盛んな地域でした。ただ、少子高齢化やコロナ禍の影響もあって、以前のように人が集まれる場をつくることが難しくなってきたんです。興野町住宅からカーメストへの建替えもコロナ禍も一段落した今、かつてのような行事や催し物でまたこの地域や団地を盛り上げたいなと考えています」(吉野さん)
「私はもう60年以上この団地で暮らしているので、昔からお住まいのみなさんとのお付き合いも長いですし、カーメストができてからは子育て世帯の方々ともお話する機会が増えました。私たちシニア世代にとって、子どもたちの明るく元気な声はすごく励みになるんです。逆に、今の子どもは高齢者との接点が少なくなってきているので、親御さんは交流の場があったらいいなと思ってくれているそうで。自治会の行事は、そんな機会を増やしたいという目的もあるんです」(水越さん)

興野町住宅自治会
会長 吉野さん

興野町住宅自治会
災害対策部 部長 水越さん
―団地における
防災の重要性
近年のコロナ禍や震災の影響もあり、ここ数年でますます高まる防災意識。水越さんは、団地における防災の取組みも重要だと語ります。
「私が所属する災害対策部は、2011年の東日本大震災をきっかけに設置されました。この団地には広い公園があるので、団地の住民だけでなく、地域の避難場所としても機能できればと考えていて。当時はみんなが本当に大変な経験をしたので、万が一の時、お互いに助け合えるようなつながりや場所を普段から築いておくことが重要なんです」(水越さん)


あたたかいものが食べたい。
災害時の声から生まれた
―身近なパーティーを開いて、防災を自分事に
防災の意識付けと地域の交流の場として、興野町住宅自治会が企画した〈豚汁パーティー〉が2月に開催されました。ただ豚汁をふるまうだけではなく、災害時にかまどとして炊き出しができる〈かまどベンチ〉を使用した防災訓練にもなっているのが特徴です。
「中央公園には、平常時は憩いのベンチとして利用されているかまどベンチが設置されています。いざという時、かまどとしてスムーズに運用できる体制を整えたいという思いから、水越さんをはじめとした災害対策部や自治会の役員を中心に話し合った結果、豚汁パーティーをやってみようということに。事前準備やリハーサルを経て当日を迎えたのですが、大勢の方にお越しいただき無事に終えられたので安心しましたね」(吉野さん)
「防災イベントって聞くと、少し身構えてしまう方も多いですよね。だから、タイトルにパーティーという言葉を入れて、身近で楽しく感じられるように工夫しました。災害時の避難所で一番多かった“あたたかいものが食べたい”という声から生まれた企画なので、いわゆる防災食ではなく、日常食として愛されている豚汁を選んだのも、そういった理由からなんです」(水越さん)

中央公園に設置された
かまどベンチ(平常時)

非常時にはかまどとして
炊き出しなどに活用される
―イベントを通して、
あたたかい“つながり”を実感
「今回のイベントでは、下準備から火起こし、調理まで、約300人分の豚汁を作って、団地や地域のみなさんに楽しんでいただくことができました。これは、私たちの自治会だけで完結できるものではなく、かつてこの地域の行事を運営されていた方々や、JKKさんも含め普段から交流のある協力メンバーのみなさんの力があってこそ。人やまち、地域の“つながり”の大切さを改めて感じましたね」(吉野さん)
「B・C号棟は高齢者が多いので、なかなか外に出られない方も多くて。だから、親切なご近所さんから“○○さんのおうちに豚汁を持っていってあげたらすごく喜んでたよ”という話を聞くと嬉しくて。これって、やっぱり団地が長年培ってきたご近所付き合いがあるからこその“つながり”なんですよね。これからはカーメストの若年層の方々とも、もっと接点を増やしていきたいですね」(水越さん)

イベントを聞きつけて
親子で参加される方も

約300人分の材料を下ごしらえ

やさしい味付けの豚汁は
子どもたちにも大人気

地域とJKKと
手を取り合って、
つないでいく

興野町住宅内に新設されたコミュニティサロン
―“つながり”は、
みんなで一緒につくるもの
「自治会の日々の活動をするにあたって、JKKさんとの連携もすごく大切だなと感じています。普段から〈住まいるアシスタント〉さんとメールでやりとりしていますし、私の地域の窓口センターの方にお電話することもありますね。イベントの相談をすると“水越さん、もちろん任せてよ”って言葉をかけてくださるような関係性です。やっぱり団地や地域を盛り上げるには、みんなで仲良く、楽しんで一緒にやっていこうよっていう気持ちが大事ですよね」(水越さん)
「施設面でいうと、A号棟エリアのカーメストへの建替えに合わせて新設していただいたコミュニティサロンは非常に重宝しています。かつて集会所だった場所なのですが、カラオケクラブや各種教室など、イベントの頻度も利用する人も以前より増えて、交流がすごく活発になりましたね。ここの住民はもちろん、地域の方が参加できるイベントもあって、まちと団地の“つながり”の輪がより広がったなと思います」(吉野さん)

具材たっぷりの出来立てを提供
寒空の下で食べる豚汁は格別

健やかで心地良い
ご近所付き合いが
生まれる暮らしを
―世代を問わず、
自然につながり合えるように
今回の〈豚汁パーティー〉を通して、改めて自治会主体のイベントの意義を感じることができたという吉野さんと水越さん。最後に、今後の活動についても語っていただきました。
「単身で高齢になってくると、一人で外に出かけられない方も多くて、ご近所さんが気に掛けながらたまに様子を見に行ったり、見守りのような活動が自然にできているんです。カーメストには子育て世帯や若い方も多いと思うのですが、そんなご近所付き合いが世代を超えて生まれるといいですよね。そのためにも、今回のようなイベントを地道にでも続けていくことが大事だなと思っています」(吉野さん)
「イベント中に若いお母さんが私のところに来て“こんなつながりを持ちたかったけど、つながり方がわからなくて”と声を掛けてくださったんです。告知活動はしていたものの、同じような方はまだまだいると思っています。ただ寝て起きて暮らすだけの住まいではなくて、お互いに自然に声を掛け合えるようなコミュニティがあると楽しいし、いざという時も安心ですよね。これからも自治会のみなさんとコツコツ活動を広めていきますよ」(水越さん)

カーメスト興野町のマルチサロンにて
取材にご協力いただきました

広々とした中央公園は
子育て世帯の憩いの場にも
世代を超えて
人と人が自然体で
つながれるように
買い物に行く途中で、
顔見知りのご近所さんと楽しくおしゃべり。
その傍らでは、子どもたちが元気に
公園を駆けまわる声。
おはよう、いってらっしゃい、おかえりと
気兼ねなく声を掛け合える
あたたかい“つながり”を
次の世代へとつないでいくために、
私たちは、そのきっかけとなる活動を
これからも続けていきます。
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